旧ソ連出身フランス在住の監督が映し出した、国後島の《真実》とは。第二次世界大戦から76年、北海道からわずか16キロの近くて遠い島。私たちの知らない国後島の今を映し出したフランス映画『クナシリ』は2021年12月4日公開。
北海道からわずか16キロに位置し、かつては四島全体で約17,000人の日本人が生活していたという北方領土。しかし、戦後の1947年から48年にかけて強制退去が行われ、今日本人は一人もおらず、日本政府は問題が解決するまで、日本国民に入域を行わないよう要請している。
本作は、そんな、日本人が容易に足を踏み入れることができない地、北方領土の国後島で暮らすロシア人島民らの生活、島の様子をありのままに映し出す。
寺の石垣、欠けた茶碗、朽ち果てた船や砲台など、国後島のいたるところに第二次世界大戦の痕跡があり、島民らはそれらを土から掘り起こしながら、日本人との思い出も記憶から掘り起こし始める。
日本人墓地は土に埋もれたまま無残に放置されており、島民らの生活圏も、整備が行き届いていない家やゴミが散らばり荒れ果ててているなど、忘れ去られた島のような寂しい風景が広がる。政治に翻弄され、複雑な思いを抱える島民ら。現状を嘆き、率直に生活苦を語る彼らの厳しい暮らしについて日本ではあまり知られていない。
ロシア側の主張に偏ることなく、島に暮らす人々の証言や生活の実態を映した本作からは、本当に解決すべき問題や住民たちの真の願いが見えてくるだろう。
この度完成した予告編は、テレビ画面に当時の首相、安倍総理が意気揚々と「互いの信頼関係をより深め平和条約を締結し…」とスピーチするも、とくに気にもとめていない様子のプーチン大統領が映る場面から始まる。実際は、第二次世界大戦から76年、日本とロシアには平和条約は結ばれていない。「ゴミ溜めしかない」「トイレが無くて困る」と話す島民らの姿から私たちは何を思うのか、全容が気になる予告編となっている。
旧ソ連(現ベラルーシ)出身で、現在はフランスを拠点とするウラジーミル・コズロフ監督が、ロシア連邦保安庁の特別許可と国境警察の通行許可を得て撮影した国後島の現在。解散総選挙が迫る中、北方領土問題も忘れてはいけない。
『クナシリ』は2021年12月4日公開
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